2009年12月25日

座談会「ピカソ de はなそ!特別編」の内容が、『ゼロ・ゴ・ゼロ』新年1月号に紹介されています。ありがとうございます。ぜひご一読を。
 
「これは僕の街ではできない、うらやましい」と言っておられた、山田さんの言葉をいま思い起こしています。デザインというものがコミュニケーションであるなら、そして美術館活動もまたそうであるなら、まずそこに人がいて初めて成立する。集客の仕事に頭を悩ませていると、ついよその土地の手柄やすごい成功例をまねしたくなってしまうけれど、まずここに誰がいるのかそこから出発しなければいけないのだと、あらためて思います。
 
それにしてもこうして素敵な誌面に再構成されて振り返ると、本当に素晴らしいお仕事の数々がスパークした秋だったなと−−。感心していちゃダメよ、さあ次は何をすべきなの?、と『ゼロ・ゴ・ゼロ』さんからのゲキをもらった気持ちです。
 
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2009年11月20日

スタッフによる食べある紀を順次、紹介させていただきます。シェフの手の中にあるドラ・マール、展示室に掛かっているドラ・マール、自分なりの印象の中のドラ・マール、色んなことを考えながら食すとそれは楽しい、発見に満ちたアート体験。こんなの初めてです。すばらしいシェフたちのお仕事に感謝します。みなさんの体験はどんなでしたか?
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ドラ・マール (お菓子のお庭 藍clubさん)
 純白の優しい表情は、デリケートな甘さのグラデーションそのもの。「ドラ・マールの肖像」のおしゃれで穏和なムードを連想させて楽しい味わいでした。しかも!お店へうかがってびっくり。「キュビスム」なる第2作がひかえているではありませんか。もちろんGET。目に映る世界を幾何学的に再構築してしまったピカソたちの実験精神を、シャープな輪郭が体現します。ここは1920年代アール・デコのフランス?!と目をごしごしするわたくし。シェフの遊び心すごいです。お味もまた調和の中にアクセントを効かせたもので、うーんスィーツは深かった。自由にしかし慎重にデザインされたそれぞれのシルエットには、絵画作品に対するシェフの敬愛のエスプリがひしひし伝わってきます。二部作のエントリーどうもありがとうございました!
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おいもダンス2 (patisserie bananadance kitajima(バナナダンス キタジマ)さん)
 二つのおいしさがドッキング、それだけでわくわく。お芋のよさを二つの面から描いたという硬派な企画です。でもお味はフランクにていねいに素顔の材料を感じる、優しくさわやかな風味でした。1+1は2以上、でモデルの魅力を引き出すってこれ実にピカソのキュビスムではありませんか。お味で実感するアート理論、まいりました。
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ピカソロール (パティスリー AU POIVRE(オゥ・ポワブル)さん)
 なるほど真っ白なキャンバスを思わせるまばゆいような世界から、ごろり、ぷるん、と色んな登場人物がお口に飛び込んできます。これは面白い、確かにアーティストの遊び心そのもの。ピカソのように表現してくださった、まさに表現的鑑賞・鑑賞的表現のたまもの。そして白は「ドラ・マールの肖像」の白でもあります。それはそうと、たっぷり味わっても後をひかない上品な甘さに、何切れでもおかわりしてしまうではないですか、助けて! うーこれが1本売りの理由だったのか...。
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ドラ・ショコラ (菓子工房いぬいさん)
 あれ?とすぐ言葉がでてこない。もう一口。ありゃ? 食しているのは確かにチョコなのに...。プレーンな外観にだまされたわたくし。ひたすら味覚の手品に目をとじ言葉を止めて身をあずけたのでした...。一つのことの中に色んな答がかくれている。絵の魅力も同じこと。ドラ・マールという一人の女性の魅力だってそう。そんなシェフのメッセージが聞こえてくるようです。-- 絵のことを一言でいうのって難しい。その一言さえ選ぶことができたら。この解答、脱帽です。
neuf
芸術の都 (ケーキハウスオシグリさん)
 ブラウンのスパイラルにまとめたエレガントさの中に、あぁ...、おぉ...、思わず歓声をもらしてしまう、甘酸っぱさと香ばしさが次々と協奏してきます。謎めいた魅力がいくつでも隠されていそうな、アーティスト・ドラの大人の愛らしさを思ったことです。ネーミングに十分匹敵するロマンティックな一時を過ごしました。うー深い。
huit
フリアン・ド・ドラマール (菓志道TAKAICHI(たかいち)さん)
 ほがらか。小さなボディからぱっと光が口中に広がるような、パンチのあるおいしさです。一目見て強い印象を与えるドラの、輪郭のはっきりした個性を思わず連想してしまいました。感性と感性が出会うアートにとって、第一印象はとても大切。明快な一口目の向こうに二重三重の風味が織り込まれて来る小さくても力強いドラマ。焼菓子って深いんだなあと感服した次第でした。
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トレゾール・マカロン (ナッツベリーファームさん)
 玉手箱式という手がありました。サクとくだけてやって来るお味は、新鮮な食べごたえを満足させます。恋人ドラを、同じ人と思えないほどたくさんの絵に変貌させたピカソを思ったことです。一色ごとシンプルに見えてもそれぞれハッとさせるお味のコンビネーションが仕込まれていて楽しめました。今度はどんなドラが思い浮かぶかしら、一つ一つの出会いが待っています。それぞれが宝箱なんですね。

2009年11月19日

スタッフによる食べある紀を順次、紹介させていただきます。シェフの手の中にあるドラ・マール、展示室に掛かっているドラ・マール、自分なりの印象の中のドラ・マール、色んなことを考えながら食すとそれは楽しい、発見に満ちたアート体験。こんなの初めてです。すばらしいシェフたちのお仕事に感謝します。みなさんの体験はどんなでしたか?
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ピカソランチ (欧風料理シェ熊谷さん)
 要予約のドキドキランチ体験。赤と緑が目に鮮やかなメインのお皿は、秋野菜いっぱいの堂々たる味覚巡りの旅を満喫できます。野趣あふれる香ばしさと刺激的なチーズの風味が大層気に入ってしまいました。そう、ドラ・マールは可愛いだけじゃない大人の女性。パリの町を生き、アートを生きた、一人の実在の人物の強烈な存在感をふと思ってしまいました。絵画に想いを馳せながらの食事ってこんなに面白い! まさにうまそ企画の醍醐味ですネ。
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ミルフィーユ・オ・ショコラ (CHRISTINE(クリスティーヌ)さん)
 ストライプ、丸いかたちのくり返し、ピンクとブルーの筆づかい。ほほがほころんでしまう楽しさがあります。「なるほどあの絵がこうなるのかあ…」。目で楽しんだ後、面白い食感と風味があくまで穏やかに、ふわりと。この調和こそ当館のドラのやさしいムードを実に誠実に映し出しているではありませんか。すごいなあ。
quatre
ピカソバーガー TANTO(タント)さん)
 三食目。大の鶏好きでして、特設オープンカフェで阿波オドリバーガーが今日で食い納めと思うと何とも残念(11月8日、記)。たべごたえ=そこに向けてバンズのおいしさと具のこんもりがいつも楽しませてくれます。極上の親子丼にも似た「渾然一体」がTANTOさんの美学なんだなと。それを肌で舌で感じるのが「ピカソdeうまそ!」企画です。アートの可能性も人生も誰にも負けないほど楽しんだピカソの哲学を、思いながら食すとまた一層おいしいのです。ピカソの大きな声を(聞いたことないけど)感じるひととき。
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ロンブル・ドゥ・ドラ・マール (お・菓・子・畑 Petit Art(プチアール)さん)
 泣く女ドラの、ふとおだやかな瞬間を思うほど愛しくなるのが、当館の「ドラ・マールの肖像」の魅力。柔らかい白一色の背景に紫のトーンがさえる、「モーブ色(紫葵)のえりまき」とあだ名された逸品のシンプルさと甘さ。このお菓子で、口いっぱいに共感することができます。うーん、こういう攻撃があるのかあ。忘れてならないのはこのビスキュイの大きなサイズ。これ食べちゃ悪いなあとしばし眺めてしまうそのシルエットこそ、シェフの脳裏に刻まれたドラの横顔だなんて。ビスケット、あなどれません!
deux
ピカソdeピカタ (レストラン コックドールかげやまさん)
 わたくし無知でテキトーにとじた肉がピカタと思ってました。ちゃいます。ぶワッと広がるチーズな風味の中から、オーブンとデミソースと二重の香ばしさが順々に、お肉を喜ばせます。手をかけたお仕事がちゃんと伝わってきて、いろんな色彩が頭に浮かんでくる。おそるべし「洋食」。可愛い息子ピカソの着ぐるみにあれこれ世話焼く、あったかーいスペインの母に包まれる思いでお肉と一体化したわたくしです。シェフ、照れないで自慢してください。ピカソの故郷カタルーニャを僕は楽しめましたよ。
un
ベル・ドーラ (キャフェ・ド・パウゼェさん)

 家族で朝パウゼェ。さりげなく元の作品の造形性をアレンジする目ぢからに、まず釘付けです。そして、大人向けの薫り高いムースのはらはらするようなハーモニーは、それはドラマチック。並みはずれて強いものを持ちながら、自らのあやうさに胸を痛めた、ドラのダイナミックな心理をあまりにもイメージさせます、すごい、ため息...。彼女と出会ってしまった驚きが、いまも頭から離れません。素敵な体験でした。シェフありがとう!

2009年11月18日

ポストカードブックについて紹介して下さいました。ありがとうございます。スタンプラリーも残すところあと1週間となりました。どうぞご参加下さい。スタンプカードは、協力店か近代美術館、または『ゼロ・ゴ・ゼロ』11月号で入手できます。

>> くわしく見る

2009年11月11日

クリックして、チラシをごらんください

2009年11月10日

美術館ロビー(ムーアの前)で川柳の花を咲かせました。コピーライターの新居篤志さんから、コピーづくりを楽しむコツをわかりやすく伝授。誰に伝えるかを決めよう、心を済ましてよく見てみよう、ちっちゃい気づきを大切にメモしよう、上手く言おうとしないで 正直に言ってみよう、伝える相手の 顔を想像しながら・・・なるほどなあ。
 
ロビーで開催したのには意味があります。もちろん「ドラ・マールの肖像」を何度も見にいけるようにです。作品に関する質問コーナーも時間が足りないくらい色々な声が飛びかいました。「伝える」気まんまんの皆さんから発せられるアート取材の目線は真剣そのもの。こういう場がいつも作れたらと大いに刺激をもらいました。
 
川柳、コピー、といった課題を通して、初対面の人たちそれぞれの「アート」がちょっとずつ触れ合った、素敵なひとときでした。
 
>> ピカソ川柳作品をぜひ見る

2009年11月08日

棚瀬伸司さん 人々にアートを近づけるという企画意図からポップアートを想起したとのこと。意外というと失礼ですが正統コンセプトに納得。僕は線描画家としてのピカソと漫画のマッチングばかり面白がっていました。

池上貴文さん 一番難解な作品とご本人がおっしゃられていたのですが、コメントをお聞きしてやっぱり難解(!)でした。元をただしていくと自分の育った風土にたどり着き…というお話し。でもこれ実は「表現」を問う場面ではわかるわかるのお話だなと思いました。

山田正彦さん いちばんたくさん語ってくださいました。もっと聞きたかったので後で質問しました。テーマであるピカソとの接し方を泣きそうなほど切り詰めて挑んでくださったのだなと感激したことです。

中山典科さん(NDC Graphics) ダルちゃん阿波へ行くとのこと。深くないなんて言っておられましたけど、ピカソとダルとの架空の出会いとは、まさに「表現的鑑賞」の直球アンサーです。自分だってモデルになってみたいよなあと、知らない間に僕もピカソファンになっているのです。

木川隆志さん ドラの肖像がここにあると伝えたいそこだけです!と。ドラが好きで好きで激写したマン・レイの写真をモチーフに。ドラを見つめる熱いまなざしにハラハラ引き込まれていく仕掛けですね。

藤本孝明さん 一枚の絵から咲いたたくさんのポスター、花々に集うハチさんになろ!というメッセージ。思いを込めればコミュニケーションなのではなく、みんなの中に動きが生まれることなんだということですよね?

新居篤志さん 座談会の口火を切ったのはコピーライターの新居さん。コミュニケーション・デザインということを考え取り組んだと。プロジェクト全編を通じて、語り方を提案してくださったのです。私たち鑑賞者の語り、そして美術館自身の語りです。
 

聞き応えのあるトークと飛田さん(ゼロ・ゴ・ゼロ編集長)の司会でした。が広報不十分でもっとたくさんの方に聞いていただけたらと、毎日反省の事務局竹内です。「どうしてデザイナーになったのですか!」とお客様から勇猛質問のおかげで、レアな生い立ちトークを聞くこともできました。クリエイターの方々、やっぱり面白いです。すごいです。

2009年11月07日

 展覧会が実現してみて、デザイナーの皆さんの人柄や鑑賞観が作品に大きく反映していることに新鮮な驚きを覚えていました。そして今日、ご本人のコメントを実際に聞いてみると、想像していた以上にピカソやその作品に対して敬虔な態度で取り組まれていたことがひしひしと伝わってきて、二度驚きました。今回のポスター展の成功は、そうしたクリエイターたちの緊張と節度があってこそなのだと思った次第です。
 
 日頃から美術作品や展覧会を伝える仕事の中で、デザイナーと接する機会は数限りなくあったはずなのに、そのようなデザイン行為の心理を果たして理解していたのだろうかと自省しています。お互いの持ち分、使命を自覚していないところにコラボレーションは成立しません。そのことを思い直した座談会でした。

2009年11月05日

大きな扱いで載せて下さいました。ありがとうございます。残すところあと3日、どうぞおいでて下さい。