2005年10月22日

言葉にしたい気持ち

引率メモ  −「色,線,形,そして音」展− vol.2


こんどの展覧会は、絵と音楽の間を行ったり来たり万華鏡のように楽しい企画。絵と関わる曲も流れて、たくさんの素材が散りばめられた会場をぜいたくに背景として、音の気持ちにこだわるクラブを考えてみました。先にレポートしたピアノの導入の後、僕は久しぶりに高学年担当。しかも森竹ゲバゲバコンビ(知らんか)&門倉乾のお姉さんコンビに初トライ。

おとめも低学年は乾さんから「生活の音」という素適な視点が提案された。ピアノを聞いて、楽器を描いたコーナーで変わった楽器の話をしたり、暮らしの中の音を思い出したりして、マティスのJAZZ「オトmemo」へ向かう流れは、なかなかのストーリー。悩んでいた二人の不安を励ますような、子どもたちの元気な取り組みがあった。音楽展の面白さに応える企画で悩んだ分、プログラムは明確に絞り込めたと思う。音だの形だの物語だのを、それぞれに見つけてメモってみるカラフルな手帖。遠目に時々みてたけど、床にはいつくばって一生懸命だった。門倉さんも乾さんも、子どもの反応をとても考えた、オトmemoの実演をしてみせていた。

高学年は何としても詩と楽器に取り組んでみたかった。表す気持ちもこだわりもある、でも小さい子向けのようなインタビューにはなかなか答えられない、自分だってそうだ、お互いもう大人。だけど、子どもになってことばと音で遊んでみたかった。カンディンスキーの絵を、形でも様子でも、できるなら音でも、言い当てを寄せ合ってみようとした。
  みんなで詩を作ってみたいんだよね。ひびきのゲーム。
  うーん‥
  思いついた形とかさ、何かに見えたとかさ。
彼女たちが動いたのは、「書いてみる?」と言ったとき。虚空を見つめてる、作文てこんな風に子どもの時はしていたのだったか、もう言いたいことは胸の中にある、形にすることに入っているのだ。森さんも僕も、魔法のような誘い掛けなんてできない、シーン‥、と無口な時間が過ぎてく。「できた‥」って顔の人に「ねえ、教えて‥」て頼む。
「月」。純朴なことば。本当に少ない言葉が、間違わないように、自分にも相手にも間違わないようにと、姿をあらわしてくる。聞いていけば、少しずつ僕にも見えてくる。

  みんなで読んでみたいんだ。

いきいきしたしろとてもたどたどしく、シーンと緊張する時間の中で。見つけた形象を分担して読み合わせする内、もう体当たりで読み順を采配したりする内に、つながりを意識して即興で推敲する子、他の子とかぶってるのを避けて題材を変える子、そしてみんな、何だか朗読の空気にのってきて素敵な朗読へと磨いていくようす、ほんの 2〜3分の協同作業。「なんだか詩ができてきて、絵のお話みたいで、楽しくなってきたよー」って励ましでも何でもなく素直にはしゃいでしまう。ふふ、とみんなの自信の顔。

   ♪   ♪   ♪

展覧会場で音楽をめぐって話しあえるのが、あんまり嬉しくて、ずいぶんとこだわって迷ってしまった。進行に関係なく流れるBGMとの折り合いも見出せないまま走った。前半で、バレエの紹介やシャガールの挿絵本についても用意したけど、時間配分などのケアは正直準備不足。脂汗をいっぱいかきました。詩の朗読からつないで、身近なタンバリンやカスタネットで意外な音を作ってカンディンスキーの「響き」に挑戦する用意も、時間切れになってしまった‥。だけど、一緒にことばを朗読できたこと、宝物。

興奮しながら急いで集合予定の菊畑コーナーへ。低学年の子たちは座って迎えてくれた。森山さんの雪音をゆっくりみんなで見て聞いて(待って)いたそう。菊畑さんの月光の音楽(野村ワークショップで生まれた曲)をみんなで聞いた。いまだにうまく説明ができません。なんだかみんなこの日は、異界へと想いを放っていたように感じる。最後にみんなが拍手してたのも、いまだに謎。
沈黙、オト、音になるまでの気持ち、そんなことをドキドキと感じたクラブでした。

  三日月が白く光ってる
  きらきらの色のガラスの積み木
  丸い時計がチックタック
  鳥がチュンチュンと鳴き、
  タオルがぴちゃぴちゃ。
  ふぅにゃぁぁーん  
© 徳島県立近代美術館 2005-2009