2005年09月09日

参加レポート

ワークショップ「40人のパノラマ絵画!」に
参加させていただいて

 09.09 乾

「この黒淵メガネ、今までに何人の人が覗いてきたのかな?いよいよ私もそのうちの一人になれる。」列に並んで、いよいよメガネを覗く順番がくる時そんなことを思っていた。クレヨンで描く場所(ギャラリー)と、描く景色(噴水の花壇)までの距離が遠く、みんな小走りで行き来する。すれ違うとき、目が合ったり短い言葉を交わしたり。今日初めて会う人だけど、ひとつの同じ絵を描く仲間。大人も子どもも自然と交流が生まれた。それはとても素敵な時間だった。

パノラマ絵画に使う画材はクレヨン。クレヨンは昔から私の好きな画材。水もバケツも不要なのに鮮やかな発色。くっきり太い線にもできるし、ぼかしてのばしてやわらかい線にもできる。でも、好きなはずのクレヨンの絵がとても難しかった。何度も手が止まった。覚えたはずなのに頭をめぐる「ここ、どんな形だっけ?」…。メガネを覗きに走る。すると、さっき覗いた時とちがうようにも見えてくる。直す、走る、メガネをのぞく、直す… そんなことをしているとあっという間に時間がなくなった。

いぬ全員の絵を並べてみると、私は隣の絵へのつながりを描けていないことがあきらかに分かり、もっと描きたくて、うずうずした。うちの美術館でも、ものづくりの催しをしているけど、子供達が「もっとやりたい!」という夢中になる気持ちをリアルに実感することができた。

自分のパーツの出来には満足していないけど、40人分集まったときのパノラマ絵画は大好きだ。自分の絵を見る。となりの絵を見る。きれいな色の絵を見る。かわいい花の絵を見る。あのパーツを描いたのはあの人かな?と想像しながら見る。…何度見ても飽きない絵だ。数日たてば美術館を巣立ってそれぞれ作者の元へ帰る。期間限定のパノラマ絵画!40通りの想いがあって、40通りのこの先のストーリーがある。偶然集まったメンバーで描いた大きな絵。誰か一人でも違っていたら完成する絵は違うものになっていた。出会いは大切、そんなことも改めて教わった気がした。

最後になりましたが、岩野様、大阪成蹊大学の学生・研究生の皆様、本当に楽しい時間をありがとうございました。美術館のスタッフであるという立場も忘れて、夢中になって描いていました。パノラマ絵画のような、岩野さんを中心とした魅力のつまったプログラムがこれからも日本中を駆け巡り、広まっていくことを願います。そして、メガネを覗く時のどきどきや、みんなで一つのものをつくることで生まれる交流をさらに多くの人に体験して欲しいと思います。

「40人のパノラマ絵画」
2005年9月4日(日)13-16時 美術館ギャラリー(1階)、屋外
対象:一般(小学生以上) 参加無料
講師:岩野勝人・大阪成蹊大学芸術学部助教授
サポート:二木奈緒、池上将暢、吉田翔、高橋理紗、戸田真人、阿部順乃介
© 徳島県立近代美術館 2005-2009